| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) C2-19 (Oral presentation)
1個体の宿主個体と複数の共生者個体(系統)の間の非対称な相利共生は、種子捕食送粉共生系やマメ-根粒菌共生系などで典型的にみられる。しかし理論的には、このような系は1対1の相利共生系よりも不安定になりやすいと予想される。つまり、宿主のみが自分に対する貢献度がより大きいパートナーを選択したり貢献度の小さいパートナーに対して報復したりすることが可能なので、共生者の適応度を最小化するように進化がはたらき、結果として相利共生関係が破綻する可能性がある。しかし実際の相利共生系は安定に維持されており、かつ、宿主への貢献度が小さい共生者や寄生者ともしばしば共存している。
そこで今回の研究では、このような相利共生系が宿主の共生者選択の不完全さによって維持されている可能性を検討するため、簡単な数理モデルを立てて進化的安定性に関する解析をおこなった。このモデルでは、宿主が環境中の共生者プールからn個体の共生者を選択し、共生関係に入ると仮定する。共生者のうちの一部は宿主に対する貢献度xに応じて選択され、残りはランダムに選択される。共生関係に入ると、宿主は各々の共生者に一定資源Rを提供し、共生者はそのうちxを宿主の適応度増加のために、残りを自分の適応度増加のために使用する。
解析の結果、相利者と寄生者が混ざった共生者集団が進化的に安定になりうるパラメータ領域が存在することがわかった。さらに、宿主の共生者選好性が強くなると、進化的安定平衡点における相利的な共生者の貢献度は大きくなるが、それによって相利的な共生者の適応度が低下するために寄生的な共生者の相対頻度が増加し、宿主の適応度が減少するという逆説的な結果が得られた。