| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-15 (Oral presentation)

生活型の異なる樹種における光環境傾度に対する樹冠内光量の幅と葉量の反応

九州大学演習林 田代 直明

林内における光環境の傾度に対して、樹木個体の樹冠がどのように反応するか、耐陰性および生活型が異なると思われるカエデ属樹木3種、ウリハダカエデ、エゾイタヤ、ヤマモミジについて比較した。

サンプル個体の樹冠において、樹冠の幅、深さ、樹高を計測した。最も位置が高く樹冠外部にある葉の上部の光量、および最も位置が低く樹冠内部にある葉の上部の光量を計測し、全天下の光量に対する相対値を算出した。その後サンプル個体を伐採し、光量計測部位および樹冠全体の葉、葉柄、枝、幹について、数、サイズおよび重さを計測した。

樹冠内において葉が受ける最も明るい光量(Lmax)と最も暗い光量(Lmin)の差(ΔL)が最小になるLmax、つまりそれ以上樹冠を扁平にできず枯れる寸前の個体が受ける光量は、ウリハダカエデ>エゾイタヤ>ヤマモミジであった。またそのΔLの最小値、つまり個体を維持できる限界の光量における樹冠の葉の重なりは、ウリハダカエデ>エゾイタヤ≧ヤマモミジであった。

Lmaxが明るくなるにしたがってLminが上昇する度合いは種により異なり、ウリハダカエデ、エゾイタヤ、ヤマモミジの順で上昇した。つまり環境が明るくなるにつれ、ウリハダカエデが最も樹冠下部の葉を落とし、ヤマモミジは個体の光環境変化に関わらず樹冠内の暗いところまで葉を着けていた。

明るい環境下におけるLmaxLminに挟まれた樹冠空間内の葉量と枝の密度は、ヤマモミジ>エゾイタヤ>ウリハダカエデであり、C/F比および地上部生産量はその逆順だった。暗い環境下ではウリハダカエデの生産量の落ち込みが大きく、エゾイタヤとヤマモミジはΔLがほぼゼロの個体においても生産を行っていた。

この光量計測の方法により得られるパラメタは、その個体がおかれた光環境に対する「満足度」の種ごとの違いをよく表しているようである。


日本生態学会