| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-16 (Oral presentation)

低圧環境下での形態変化による光合成特性の解明

*早川恵里奈,宮村新一(筑波大・生命環境),唐艶鴻,冨松元(国環研・生物),田中健太,恩田義彦(筑波大・菅平セ),廣田充(筑波大・生命環境)

【背景と目的】

高山植物は近年の環境変動によってその存在が危ぶまれており、個々の環境要因に対する応答機構を解明することが重要である。ところが高山では様々な環境が標高とともに変化しているので、個々の影響を分けて評価することは難しい。特に高標高域に特徴的な低圧環境の影響はあまり理解されていない。気圧の影響を明らかにすることは共変している温度の解明にもつながり、低圧環境が植物に及ぼす影響を解明することは重要である。

そこで本研究では、気圧を調整できる減圧チャンバーにて植物を栽培した。低圧環境が光合成特性にどのような影響を及ぼすかを調べるために、CO2の取り込み口である気孔の形態に着目して測定を行った。

【方法】

グロースチャンバーはポンプで内部の空気を引きつつ外気を導入することで低圧環境を維持している。減圧チャンバー(0.7気圧、標高3000m相当)と対照チャンバー(1.0気圧、標高0m相当)内で、3種のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)と、分布している標高が異なる13種のミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica)を各チャンバーで約40日間栽培した。その後、大気圧下で光合成特性と気孔の形態を測定した。

【結果と考察】

減圧チャンバーで栽培した植物は、対照チャンバーの植物と比べて気孔サイズや気孔密度が大きい傾向が見られた。一方、光合成速度と気孔コンダクタンスに変化はなかった。低圧環境下では低CO2分圧でも葉内CO2濃度が一定になるように気孔の形態が馴化していると考えられる。

分布している標高別に見ると、減圧チャンバーで栽培した植物と対照チャンバーで栽培した植物の差はエコタイプ間で差がなかった。低気圧への応答は標高によらず一定である可能性がある。

本発表では、葉の断面解剖構造についても考察する予定である。


日本生態学会