| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-01 (Oral presentation)

沖縄県石垣島沿岸域における海草分布と水質変動

*寺田一美(東海大・工),房直宏(東海大・工),玖津見将史(東海大・工),高瀬照久(東海大・工),神野有生(山口大・工)

亜熱帯沿岸域にはサンゴ礁、海草藻場、マングローブから成る複合的な生態系が形成されており、土砂や栄養塩の堆積、流出、利用といった観点で、互いに深く関連し合っている。本来、貧栄養である亜熱帯海域において、マングローブ水域起源の窒素およびリン等の栄養塩は、海草藻場、サンゴ礁にとって貴重な栄養源であるはずだがその実態は不明な点が多い。

1970年代以降、同位体などを利用した海草アマモの生理学的研究により、アマモは栄養塩を、水中と底質中の両方から吸収することが明らかになってきた。しかし海草藻場の栄養塩動態に関する研究は、室内での培養実験等が多く、自然環境下での知見はいまだ少ない。また、海草の栄養塩吸収特性、藻場起源有機物のサンゴ礁への輸送過程など、各生態系における栄養塩循環に関する知見は多くみられるが、マングローブ河川起源の栄養塩とその沿岸生態系への関連性を直接測定した例はほとんどない。そこで本研究では、栄養塩がマングローブ河口域から海草藻場に至るまで、どのように変動し、どれほど利用可能であるかを検討すべく、石垣島吹通川沿岸域にて多地点連続観測を行った。

マングローブ河口から沖合の海草藻場まで、100~200m間隔で調査地点を設け、満潮時から干潮時にかけて約10時間定点観測を行った。その結果、最も沖合の海草藻場のアンモニア態窒素、全窒素は、マングローブ河口地点と比較して、平均値にして約1/5倍、1/2倍と減少し、希釈されていることがわかった。一方オルトリン酸や亜硝酸・硝酸態窒素は、マングローブ河口地点より約300m沖合の、海草藻場近辺で増加したことから、海草底質・地下水等からの溶出が考えられた。その傾向は干潮時に顕著であったことから、栄養塩溶出が引き潮によって促進されることが示唆された。


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