| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) E1-08 (Oral presentation)
落葉の分解速度は、分解する微気象や分解者群集などの外的要因と、樹種や樹冠位置などによる落葉の物理化学的性質の内的要因によって制御されている。近年、植物は内的要因としてのリターの質を通して自らに有利な養分生産環境を制御するという仮説に注目が集まっている。
九州大学北海道演習林では、地形に応じて植生が明確に異なっており、南斜面にミズナラ,北斜面にオオバボダイジュ、沢沿いにハルニレなどが優占する群落が形成されている。また、いずれの立地にもエゾイタヤの優占度は高い。本研究ではこれら4種の樹種を用い、南斜面、北斜面、沢沿いにおいてリターバッグ法による2年間の分解実験を行い、外的要因としての地形効果と内的要因としての樹種効果のいずれが落葉分解に重要であるかを明らかにした。
調査地の環境は、土壌の窒素無機化速度、硝化速度は沢沿い>北斜面>南斜面であった。枯葉の初期C/N比はミズナラ>イタヤカエデ>オオバボダイジュ>ハルニレであった。
2年間の落葉分解率を解析したところ、立地と樹種の効果には交互作用があった。樹種ごとにリターの残存率を比較するとミズナラがの残存率が最も高く、エゾイタヤ>オオバボダイジュ>ハルニレの順に低下していく。樹種ごとに立地間の残存率をみると、ミズナラ以外では沢沿いや北斜面で南斜面よりも分解が速く進行したが、ミズナラのみが南斜面で有意に分解が速かった。これらの結果は樹種がリターと分解者群集を制御し、養分生産環境を有利にするという仮説を支持するものだった。