| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-16 (Oral presentation)

海産珪藻Chaetoceros tenuissimusの挙動に影響をおよぼすDNA/RNAウイルス

*木村圭,外丸裕司(水研セ瀬戸水研)

珪藻類は水圏の一次生産の多くを担っていると言われ、地球環境において大きな影響を与えている生物群の一つである。このような珪藻類の挙動には、水温・塩分・栄養塩等の物理・化学的要因が主に影響すると考えられているが、近年、生物的要因として「ウイルス」がその挙動に影響を与えている可能性が指摘されている。珪藻ウイルスは10種以上が確認されているが、大別して1本鎖RNAウイルスまたは1本鎖DNAウイルスに分類される。これまでの調査によると、両タイプのウイルスが同一の宿主に感染する珪藻としてChaetoceros tenuissimusの存在が明らかにされている。本研究では上記の3者をモデルとし、DNA/RNA両タイプのウイルスが宿主個体群の挙動に与える影響を評価することを目的として、約2年間に亘る現場調査を行った。

調査の結果C. tenuissimusは5月から増加しはじめ、7月後半にピーク(約104 cells/ml)に達した後、急速に減少した。DNA/RNAウイルスに対する感受性が異なる2つの株を用いたMPN法によるウイルス挙動の調査では、宿主のブルーム期間中における両者の変動パターンには大きな差が認められた。しかしながら7月後半の宿主個体群の減少時には、両者とも同様な減少傾向を示した。このことから環境中には少なくとも感染性という観点で2タイプの異なるウイルスが存在し、両者が宿主個体群の挙動と密接な関係を持っていることが示唆された。現在は、現場で出現したウイルス種(DNA/RNA)の同定作業を進めている段階である。この作業が完了ことによって、両タイプのウイルスが宿主の挙動とどの様な関係を持っていたか、その詳細が明らかになるものと期待される。また、各ウイルスの宿主個体群に対する影響を定量的に評価することを目的として、ウイルスに対する抗体を用いた実験系の構築に取り組んでいる。


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