| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-18 (Oral presentation)

ヤブツバキ落葉分解に関わるリティズマ科菌類の生活史特性とその地域的変異

*松倉君予(東邦大院・理),広瀬大(日大・薬),鏡味麻衣子(東邦大・理)

ヤブツバキ落葉上に生息するリティズマ科菌類は、青森から沖縄まで国内各地の地域間において、種組成及び各菌種が落葉上で占有するコロニーの面積(コロニー面積)に変異がみられる(第57回、第58回大会発表)。

本研究では、それらの結果と各菌種の生活史特性の関連性を検討することを目的とした。調査は、千葉県松戸市(浅間神社)、同県館山市(那古寺)、東京都大島町(大島公園)のヤブツバキ自生林で行った。これらの調査地では本科菌類の種組成と優占種が異なる。すなわち、松戸はCoccomyces sinensis (CS)1種が分布、館山はCSが優占し、Coccomyces sp.、Lophodermium sp.(LS)も分布、大島はLSが優占し、CSも分布している。2011年6月に各調査地でヤブツバキの新規落葉50枚を採取し、10枚ずつ糸でつないだものを5地点に設置した。また同様に、各調査地で採取した落葉を他の調査地にも設置した(置き換え実験)。2011年7月から10月まで1か月毎に、落葉上の本科菌類のコロニー面積と子実体数を測定することにより、各調査地における生活史の特性を評価した。調査の結果、CSについては、コロニー面積と子実体数の増加パターンが各調査地で異なり、置き換え実験においても同様の結果が得られた。LSについては、大島で採取した落葉の置き換え実験で、松戸の子実体形成が館山や大島と比較して2か月遅れることが分かった。これらの結果は、各菌種の生活史特性には、調査地毎の環境条件に依存した変異があることを示している。この結果に加え、大島で採取した落葉の置き換え実験においては、リティズマ科菌類全体のコロニー面積における各種の相対的な占有割合が調査地間で変化し、松戸ではCSの割合が大島よりも高くなることが示された。

これらの結果は、地理的分布と生活史特性の関連性を示唆していると考えられる。


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