| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G1-08 (Oral presentation)

小規模止水域における侵略的外来種アメリカザリガニの低密度管理の成功事例と希少水生昆虫に与える効果

*苅部治紀(神奈川県博),西原昇吾(東大・農学生命科学),古川大恭(千葉シャープゲンゴロウモドキ保全研究会),柳研介 (千葉県生物多様性センター),諏訪部晶(神奈川トンボネット)

アメリカザリガニ(以下本種)は雑食性で止水生物に多大な影響を及ぼす侵略的外来種とされる。しかし、日本ではその認識が低く影響評価や駆除が一部で始まったに過ぎない。

演者らは、本種の局所徹底駆除により低密度管理に成功し、保全対象種の継続発生や昆虫相の回復に成功したので報告する。

試験地は、以下の2カ所であり、駆除手法は、カゴ網と塩ビ管などによるトラップとすくい採りを組み合わせて実施した。

千葉県のシャープゲンゴロウモドキ保全地は、2003年に放棄水田を湛水化して再生された。2008年春に30頭ほどの本種が確認されたためただちに駆除を開始し、以降月に1~2回の駆除を継続した結果、毎回の捕獲数は0-数個体程度に抑制された。保全対象種は健全で植生の変化なども生じていない。畦波シートで水域を囲んだ後の2011年9月以降、確認例はない。

神奈川県愛川町の水田地帯の中にある約70㎡の池では、養鯉中止後に本種が急増し、水生動物が急減した。2007年10月の調査で、総捕獲数852頭、2762gと高密度で、水生昆虫は7種110頭が確認されたのみであった。2010年から継続駆除を開始し、2011年は毎週の徹底駆除を実施し、累計駆除数は2950頭、16674gに達し、2011年9月には密度は20分の1以下になった。水生昆虫も希少種を含む23種390頭と大幅に回復した。

これまで本種は難防除種とされていたが、今回の事例は、本種の徹底駆除による低密度管理が現実的なものであることを示した。また、それにより在来生態系の保全・再生をもたらした世界的にも数少ない事例といえよう。


日本生態学会