| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-14 (Oral presentation)
侵略的外来種の侵入は淡水生態系の生物多様性を低下させる複合的な要因の1つである。淡水生態系の生物多様性を保全するためには、侵略的外来種の生物間相互作用を考慮した計画的かつ早期の排除が重要となる。しかし、生物多様性の高い地域へ侵入した侵略的外来種の初期段階における排除が水生生物に及ぼす効果についての研究例はほとんど無い。
本研究では、生物多様性の高いため池群に侵入したウシガエルの排除が水生生物に及ぼす効果について明らかにすることを目的とした。
岩手県南部の丘陵地に位置する久保川流域には、生物多様性の高い600以上のため池が残存するが、2005年頃からオオクチバス、アメリカザリガニ、ウシガエルが侵入し、中でもウシガエルは急速に分布を拡大している。ウシガエルの侵入した池では中~大型の水生昆虫などの水生生物が少なく、胃内容からはゲンゴロウなどの様々な水生生物が確認され、水生生物に及ぼす影響が示唆された。そのため、2009年に設立された「久保川イーハトーブ自然再生協議会」による自然再生事業として、ため池群におけるウシガエルの排除が2010年より本格的に開始された。2011年には生物多様性の高い110の池でもんどり型トラップ550個を設置し、地域と協働で4月~12月の毎週の排除が実施された結果、ウシガエル幼生22607頭、成体1039頭、新成体3332頭が捕獲された。一方、ゲンゴロウ、ガムシなどの中~大型の水生昆虫や在来カエル類(トウキョウダルマガエル、ツチガエル)の池あたりの確認個体数は前年の数倍以上に増加した。
以上より、生物多様性の高いため池群における早期のウシガエル排除は、とくに、大型個体による捕食圧の低下を通じて、中~大型の水生昆虫や在来カエル類の増加をもたらす可能性が示唆された。