| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-15 (Oral presentation)
ミッドウェイ諸島では1963年に小型ミズナギドリが採集され、既知のヒメミズナギドリとして標本が保管されていた。しかし、DNA分析により新種であることが判明し、2011年にBryan’s Shearwater Puffinus bryaniとして記載された。この鳥は、その後同じミッドウェイでの1990年代初頭の観察例以外に見つかっておらず、すでに絶滅している可能性も心配されていた。一方小笠原諸島でも、種が判定できない小型ミズナギドリが見つかっており、暫定的にヒメミズナギドリとされていたが、その形態は同種と完全には一致していなかった。そこで、この小型ミズナギドリのDNAと形態を分析した。
小笠原諸島で1997年以後に見つかった6個体の標本について、ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域405bpを分析したところ、全個体がBryan’s Shearwaterの配列と一致した。また主成分分析により形態を解析したところ、近縁の種に比べて体が小さく尾羽が長いという特徴を持ち、Bryan’s Shearwaterと一致していた。
ミッドウェイに比べて発見例が多いことから、小笠原諸島が本種の主な繁殖地である可能性が高い。また、最新の個体が2011年に採集されたことから、本種は小笠原諸島においてまだ生き残っていると考えられる。本種が世界的な希少種であることは間違いなく、早急にレッドリストに掲載し保全体制を整える必要がある。見つかった個体のうち3個体はネズミに捕食された状態だった。小笠原では、外来種クマネズミによる小型海鳥の捕食が問題となっており、無人島においてネズミ類の駆除事業が進められているが、本種の保全のため今後も事業を推進していく必要がある。
本種は小笠原諸島を主な産地としており、またヒメミズナギドリ類と同様に小型であることから、オガサワラヒメミズナギドリという和名を提案する。