| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-18 (Oral presentation)

国内外来種アオモジの樹冠下に散布された種子の樹種組成からみた在来種の種子散布への影響

*川口英之,鈴嶋康子(島根大・生物資源)

アオモジは、林冠ギャップ、林縁、伐採跡、造成地などにみられる先駆性の落葉小高木である。近年、本来分布がみられなかった地域での分布とその拡大が報告されている。山陰地方では、島根県安来市の東部から、鳥取県米子市、大山町の東部にいたる分布拡大が確認されている。この地域に分布拡大したアオモジの樹冠下に散布された種子を測定し、在来の先駆性種の種子散布への影響を検討した。

鳥取県立むきばんだ史跡公園内のアオモジの雌19本について、面積0.25㎡のトラップを3個ずつ設置し、落下した果柄、捕食されずに落下した果実、捕食されて排出された種子の数を測定した。果柄の数をトラップあたりの結果数とした。果柄数から捕食されずに落下した果実数を引いた値を、捕食された果実数とした。アカメガシワ、カラスザンショウ、クマノミズキなどのトラップに排出された種子数を測定した。

アオモジの果実は1個の種子を含み、8月末から10月始めに多くが捕食された。アオモジの結果数は57個のトラップで4983個、そのうち80%が捕食された。しかし、トラップに排出された種子は結果数の2%だけで、多くは他の場所に散布された。トラップに排出された種子は、アオモジの110個に対して、アカメガシワ141個、カラスザンショウ77個、クマノミズキ60個であった。アカメガシワはアオモジと散布時期がよく似ていた。カラスザンショウの散布時期はアオモジよりもやや遅く、クマノミズキの散布期間は短いがアオモジの散布期間内にあった。アオモジの結果数と捕食者により散布された他の3種の種子の合計には有意な正の相関があった。種ごとでも、アカメガシワとカラスザンショウの散布種子数は、アオモジの結果数と有意な正の相関があった。分布拡大したアオモジと果実の成熟時期が重なる在来の先駆性種との間では種子散布の空間様式が互いに影響すると考えられた。


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