| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-01 (Oral presentation)

埼玉県和光市における身近な自然の調査から保全と教育的活用

*高橋絹世(和光・緑と湧き水の会),高橋勝緒,飯島孝通,寺井幸子,渡辺康三,坂井和子,若山正隆

序 和光市は東京都板橋・練馬両区に接する都市部にあり,都市開発が進みつつある.地勢的には武蔵野台地が荒川の低地に落ちる末端部にあり,新河岸川にそそぐ小河川(白子川,越戸川,谷中川)が台地を削り起伏に富む.地質的概要は,上層より関東ローム層、武蔵野礫層、東京層から成る.都市部にありながら,武蔵野礫層下部からの多くの湧水が見られる.身近な自然環境として湧水・斜面林には希少植物の自生も見られ,貴重な生態系が残る.これらを,行政および日本自然保護協会との協力により1999年より調査し,それを基に保全策の構築・実施,また,市民や子供たちに身近な自然を伝え,自然と接する意義を広める活動を進めてきた[和光の身近な自然探訪(2004),和光の緑と湧き水(2009)出版].

調査 1999年より和光市白子地区で,水文・地質,水生生物,植生,湧水文化について,また,2002年まで,市内の約10ケ所での概略の調査を実施した[業務報告書,和光市・日本自然保護協会(2001、2002)].その後,主に白子地区,新倉地区,和光樹林公園をフィールドとして,湧水・樹林地の生態系などについて観察・調査を継続している.この間,新倉および白子大坂は,市のふれあいの森に指定され自然環境維持のための公園となった.

活用 調査を基に多くの市民が身近な自然に親しむ環境作りに努めているが,人の立ち入りと自然保護は相反する面もある.調査・観察を通し,適切な保全策を講じることにより,それらの両立を目指している.

結語 自然環境調査を単に調査に終わらせることなく,人と触れ合える自然の保護に結びつけることを目指している.都市部の小規模な緑地・湧水などにおいて,“自然”とは何か.人手を加えつつ“自然”を保つ持続性ある生態系の保護を模索している現状を報告する.


日本生態学会