| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-02 (Oral presentation)

環境保全型稲作は水田の生物多様性を向上させるか?佐渡全島スケールでの検証

*西川潮(新潟大・超域),齋藤亮司((株)サンワコン),渡辺竜五(佐渡市農林水産課)

佐渡島(佐渡市)では、過度な人間活動の拡大や縮小により劣化した里地環境を再生させ、地域経済の振興を図ることを目的として、2008年より水稲農業に「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度が導入されている。その主な認証基準は、農薬・化学肥料の使用を従来と比べて5割以上削減し、「生きものを育む農法」に取り組むことである。生きものを育む農法とは、1)ふゆみずたんぼの実施、2)江(水田内の深溝)の設置、3)魚道の設置、4)ビオトープ(通年湛水の非耕作田)の設置をいう。認証制度の導入以降、佐渡島における「朱鷺と暮らす郷」米の栽培面積は年々拡大し、平成23年度は全島の20%以上の水田で、認証米栽培の取り組みが進められている。この取り組みと、佐渡の風土や固有文化の保存が認められ、2010年6月、佐渡島は世界農業遺産(GIAHS)に認定された。しかしながら、これまで、農薬・化学肥料の低減や生きものを育む農法といった「環境保全型農業」が水田の生物多様性の向上に与える影響についての科学的知見は乏しい。

本発表では、佐渡島において、認証制度の導入以降(2009年~2011年)に全島規模で実施された400水田を超える冬と夏の水田調査の結果をもとに、環境保全型農業への取り組みが水田の生物多様性に与える影響について検討した結果を報告する。本研究では、野外で判別できる大型の水棲無脊椎動物を水田の生物多様性指標として、とくに、1)農薬・化学肥料の低減効果(5割)と、現在佐渡島での取り組み面積が最も多い、2)ふゆみずたんぼと3)江の設置の効果に着目する。また、水田の生物多様性に影響すると思われる他の農法(耕起の有無など)や、水田周囲の土地利用・立地条件、冬期の水面率といった環境要因の影響についても考察を進める。


日本生態学会