| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-05 (Oral presentation)

インセクタリープランツの混植栽培が夏秋ナス葉上の節足動物群集に与える影響

*星野 滋,松浦昌平(広島総研農技セ),北村登史雄(農研機構・野茶研)

夏秋ナス栽培において,圃場を囲むようにソルガムを栽培して,外部から害虫の侵入を防ぐ障壁として利用している。また,ソバやスカエボラなどを混植することにより,害虫の天敵を増やし,害虫を抑制する技術もある。これらの技術の組み合わせが,ナス葉上の害虫や天敵などの節足動物群集にどう影響するか調査した。

東広島市八本松町のナス栽培農家圃場において,2010年にソルガム障壁とスカエボラ混植の組み合わせ(ソルガム-スカエボラ区),2011年にソルガム障壁とマリーゴールド混植の組み合わせ(ソルガム-マリーゴールド区),2010年および2011年にソルガム障壁とソバ混植の組み合わせ(ソルガム-ソバ区)で夏秋ナスを栽培した。比較のため,夏秋ナスのみの区(無障壁無植生区)を設けた。ソルガム-ソバ区,ソルガム-スカエボラ区およびソルガム-マリーゴールド区のナス葉上には,捕食者であるヒメハナカメムシ(コヒメハナカメムシおよびナミヒメハナカメムシ)が無障壁無植生区よりも増加した。ソルガム-ソバ区,ソルガム-スカエボラ区およびソルガム-マリーゴールド区でアシナガグモ科が無障壁無植生区よりも増加した。一方,アブラムシ類(ワタアブラムシなど)やアザミウマ類(ネギアザミウマなど)は無障壁無植生区の方が他区よりも多かった。特に2011年の無障壁無植生区では,カンザワハダニが大発生したため,殺ダニ剤を2回散布し,密度を抑制したが,ソルガム-ソバ区およびソルガム-マリーゴールド区ではヒメハナカメムシ密度が高く推移し,カンザワハダニを捕食したと考えられ,低密度で推移した。

ソルガムを障壁とし,ソバやスカエボラ,マリーゴールドとの混植により,ナス葉上に捕食者が一定の割合で存在し,植食者の大発生を抑えていると考えられた。


日本生態学会