| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-11 (Oral presentation)

レジームシフトが生態系機能に与える影響-湖沼の基礎生産に関して-

加藤元海(高知大・黒潮)

生態系の状態が突発的に大きく変化を起こす現象は、レジームシフトと呼ばれている。その例として、湖沼における突然の富栄養化、陸上生態系においては森林の消滅や砂漠化、海洋においては漁獲の大変動などが挙げられる。レジームシフトでは状態が大きく変わることから、生態系の構成種も大きく変化することになる。生態系の構成種が異なれば、生態系の機能も変化し、さらには我々人間が生態系から受ける恩恵も異なってくることが考えられる。しかしこれまでのところ、レジームシフトが起こった結果、生態系の機能がどう変化するかはよく分かっていない。ここでは、生態系機能として、湖沼の一次生産に着目する。湖沼では、富栄養化に伴って一次生産者の担い手が、沿岸帯の付着藻類から沖帯の植物プランクトンに移行することが知られている。実際の湖沼で得られたパラメータ値を基に構築した数理モデルを使って、レジームシフトの前後で、湖沼全体の一次生産量がどのように変化するのかを紹介する。その結果、1)レジームシフトの前では、栄養塩流入量が増加するにもかかわらず一次生産量に大きな変化がみられない傾向があり、2)レジームシフト後には、一次生産量の急激な上昇がみられ、そのほとんどが植物プランクトンによることが分かった。富栄養化に伴った、一次生産者の入れ替わりと湖沼全体の一次生産量の変化は、湖沼の形態に強く依存していた。


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