| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) H2-22 (Oral presentation)
近年では、人工林においても生物多様性の保全などの機能の発揮が期待されており、木材生産以外の多様なニーズに答えるための管理手法の確立が必要とされている。しかし、単一樹種の植栽による人工林化がもたらす林内環境の変化や、管理作業が引き起こす自然林とは異なる質・頻度の撹乱は、林床植物群集の種組成や多様性に大きな影響を与える。多様なニーズに合致した森林管理の指針を得るためには、森林景観の改変や現行の森林管理に対する森林構成種の応答を理解することが必要である。本研究では、落葉広葉樹二次林と針葉樹人工林からなるランドスケープにおいて、林冠木の構成や管理形態の異なる森林タイプ間での林床樹木群集の機能的形質の変異を明らかにし、森林景観の改変や森林管理に対する樹木群集の応答を明らかにすることを目的とした。
調査は、群馬県の利根沼田森林管理署管内で行った。比較的高齢な広葉樹二次林と列状間伐後2年が経過したスギ人工林、列状間伐が行われていないスギ人工林の3つの森林タイプにおいて調査区を設定し、林床の広葉樹の種名と個体数を記録した。出現した広葉樹について、葉の性質(面積あたりの窒素含有量、LMA、葉面積など)、最大樹高、種子長、果実長、果実タイプなどの形質を森林タイプ間で比較し、森林景観の変化や森林管理の影響を受けやすい機能的形質を抽出した。また、群集の機能的形質の変異が森林タイプ間で最も顕著なのかを検証するために、形質の類似度を示す機能的多様性を森林タイプ内と森林タイプ間の2つのスケールにおいて比較した。
本発表では、これらの結果をもとに、森林改変や管理が人工林の林床樹木群集の成立メカニズムに与える影響について考察するとともに、多様性の保全に向けた森林管理手法について議論する。