| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) I1-02 (Oral presentation)

ニホンジカの個体数管理がスギ苗木の食害に及ぼす影響

*榎木勉,内海泰弘(九大農),矢部恒晶,八代田千鶴,小泉透(森林総研),久保田勝義,鍛冶清弘,壁村勇二,椎葉康喜(九大農)

ニホンジカ(以下、シカとする)個体数の増加が顕著となっている宮崎県椎葉村に位置する九州大学宮崎演習林において、シャープシューティングによるシカの個体密度管理を実施し、その効果を明らかにするために、植栽したスギ苗木への食害状況ならびにシカの出現頻度の変化を調べた。

2010年4月、これまでのモニタリング結果からシカの目撃頻度の最も高い場所を中心に半径約3kmの範囲を調査区と設定した。調査区内の20カ所に20本ずつ植栽し、食害状況と苗高を毎月記録した。また、10ヵ所には自動撮影装置を設置し、シカの出現頻度を記録した。

2011年4月、植栽されていた苗木を除去した後、前年同様に苗木を植栽と観測を実施した。シカ個体密度管理は2011年4月、6月、10月に実施し、それぞれ6頭、5頭、2頭が捕獲された。

個体数管理実施前の1年間では342本の苗木が食害にあったが、食害により枯死したとされる苗木は15本であった。調査区中心部では苗木は植裁直後に食害を受けたが、調査区中心部から離れるほど食害率は低下した。調査区周辺部の食害率は時間経過に伴い増加した。シカの出現頻度は調査区中心部で多く、周辺部で少なかったが、この差は時間経過に伴い増加した。

個体数管理が実施された2011年度では、調査区中心部の苗木の食害率は前年度と比較して低いまま維持されている。シカの出現頻度も調査区中心部では低いまま維持されているが、周辺部では前年と同程度の値が観察されている。

以上の様に、現時点ではシカ個体密度操作の効果が見られたと言える。今後、個体密度操作を停止後のシカの個体数、行動パターンの変化を検討する。


日本生態学会