| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) I1-09 (Oral presentation)
半自然草地では、野焼きや採草などの人為的な管理が継続的に行われることで、種多様性の高い群落が維持されている。しかし、植生管理が群落の種組成に与える影響は地域ごとに異なり、管理手法以外の他の環境要因が種組成に影響を与えていると考えられる。本研究では、熊本県の阿蘇外輪山東部と北部に成立する半自然草地を対象として、採草による効果(種多様性の向上)をもたらす要因を、土壌の化学的特性から明らかにした。阿蘇外輪山における土壌の化学的特性は、火山灰の風化が比較的進んでいる北部と、新鮮火山灰が継続的に供給される東部で異なり、とくに土壌pHの差異が顕著だった。土壌pHが高い東部では、群落の種多様性が「野焼きのみ」よりも「野焼き+採草」で有意に高く、採草の効果が顕著であった。一方、土壌pHが低い北部では「野焼きのみ」と「野焼き+採草」との間で種多様性に有意な差がなく、採草による効果が明確ではなかった。また、地域間および管理形態間で、群落の種組成は有意に異なり、土壌pHが低いほど優占種の被度が抑えられ種多様性が高くなる傾向が認められた。本研究から、半自然草地の種組成および種多様性は植生管理手法だけでなく、土壌pHによる影響を受けていることが分かった。今後は、阿蘇外輪山だけでなく、他の地域も含めて結果の一般性を検討していく必要がある。