| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) I1-11 (Oral presentation)
里山とは、集落とそれを取り巻く二次林、水田、草地などから構成される、我が国の農村景観を代表する地域概念である。里山の植物は、刈取りや火入れといった人為的攪乱のおこるハビタットへの依存度が高い。そのため、人為的攪乱に依存しない非里山的な植物とは異なる遺伝的変異のパターンを示すのではないかと考えた。たとえば、(1)意図的・非意図的にかかわらず、人為によって種子が長距離散布されているため、地域間の遺伝的な違いが不明瞭である、(2)人による里山利用にともなって分布を拡大したため、検出される遺伝構造が非里山的な種群(たとえば遷移後期に出現する種群など)と異なるなどの特徴が考えられる。そこで本研究は、これまでに発表された日本産植物の遺伝的変異の情報及び著者らが新たに採集した種群のデータをもとに地理的変異パターンのメタ解析を行い、里山種の遺伝的変異の特徴について考察することを目的とした。まず地理的境界や種内変異境界となっていることが多い境界線で全国を20地域に分け、それぞれの地域での種内変異を表にした。各地域の組み合わせでの種内変異の異同をもとに地域間の類似度行列を求めた。これから種間の類似度行列を求め,クラスター分析と多次元尺度構成法(nMDS)によって類似した地理変異パターンを持つ種群を求めた.予備的な解析として、半自然草地を主たるハビタットとするワレモコウと、既発表の木本植物12種および草本種2種とを、を葉緑体DNAハプロタイプの分布パターンをもとに比較した。その結果、ワレモコウはハプロタイプの地理的なまとまりが弱く、複数のハプロタイプが飛び地状に分布している傾向がみられた。また、nMDSによる座標付けでは、相対的に、ほかの多くの種と異なる地理的パターンをもつことが明らかにされた。今後は解析対象種を増やし、こうした特徴が他の里山種でも見られるのかどうかを検証したい。