| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) I1-12 (Oral presentation)
2011年3月の福島第一原発の事故により,各種の放射性物質が飛散した.落葉層及び土壌には高濃度の放射性物質が長時間蓄積されることが指摘され,土壌生物への影響が重要視されている.本研究では,落葉層中の主要な大型土壌動物であるミミズについて,その放射能汚染の実態を把握することを目的とした.
2011年8月下旬から9月下旬にかけて,福島県内の3地点(川内村,大玉村,只見町)のスギ人工林にプロットを設定し空中線量率を測定した.また,樹木,堆積有機物層,土壌のサンプリングを行い放射性物質量を測定した.ミミズはプロットの外周30m以内で,堆積有機物層をハンドソーティングし40-100個体を採集した.ミミズ1個体ごとに湿重を計測し,凍結乾燥したのち粉砕し,ゲルマニウム半導体検出器を用いてI131,Cs134,Cs137の3核種の放射性物質量の測定を行った(但しI131は検出されなかった).測定時間は10時間(1検体のみ130時間)とした.
調査時の3地点の空中線量率は3.11,0.33,0.12 μSv / h(それぞれ川内村,大玉村,只見町)であった.3地点のミミズ相は異なり,川内村ではAmynthas sp.,大玉村ではタニマミミズ,只見町ではヒトツモンミミズが最優占種であった.最優占種5個体の放射性物質量を測定した結果,Cs134,Cs137の平均値は,それぞれ8674,10856 Bq / kg (川内村),453,563 Bq / kg(大玉村),126,163 Bq / kg(只見町)となった(値はミミズ湿重ベース).以上から,落葉層中のミミズの放射性物質量は各地点の空中線量率に対応して増加すると考えられ,殊に高濃度汚染地域における捕食者等への汚染の拡散が懸念される.