| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-02 (Oral presentation)

コスト距離バッファーを利用した日本の森林連続性評価

*岩崎亘典((独)農環研)

森林の連続性は森林生態系の評価するための重要な指標の一つであり、評価にあたっては一定範囲内の森林面積率が用いられることが多い。しかし、この方法では林縁や線状に伸びる森林の連続性が過小評価されてしまう。そこで、コスト距離を用いて森林の連続性を評価する手法を開発し、北海道、本州、四国、九州を対象に連続性の評価を行うこととした。

コスト距離法とは土地利用や傾斜などを移動するためのコストと見なし、二点間の累積コスト値を算出する手法である。本研究では国土交通省が公開している国土数値情報・土地利用(細分メッシュ)から100mグリッドの土地利用図を作成し、森林のコスト値を1,それ以外を移動不可とした。つぎに、500m毎に最大累積コスト値10,すなわち累積コスト距離1000mで累積コストラスタを作成した。この累積コストラスタをコスト距離バッファーとし、これが連続した森林面積である。同様にして1000mバッファーに含まれる森林面積を算出し森林面積率を算出するとともに、コスト距離バッファーの面積と森林面積の比を取り、連続性指数とした。算出した森林面積率と連続性指標について市町村毎に平均値を求め、比較を行った。

連続性指数は森林面積率よりも高い値を示す傾向が見られた。例えば森林面積率の平均値が0.8以上を示す市町村は45.5%であったが、連続性指数では65.7%であった。また、東京周辺の市町村を対象にした場合、森林面積率と連続性指標の平均値は、それぞれ0.21、0.39であった。すなわち、連続性指標を用いることにより、小面積ながらも連続している森林を評価することが可能であると考えられる。ただし、森林面積率も特に量を示す指標としては有効であるので、両者を用いた評価が望まれる。


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