| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) J1-06 (Oral presentation)
ツキノワグマがスギやヒノキなどの主に針葉樹の樹皮を剥ぎ,その内側の形成層を歯で削り取って採食するクマハギと呼ばれる被害が問題となっている.クマハギに関する研究は,加害される側の特性についての解析と防除方法の開発が主体であり,加害する個体の特性についてはほとんど研究が行われていない.演者らは,京都府北部のクマハギ発生地域ででは,426本の被害木に付着しているツキノワグマの体毛を採取した.それらの毛根からDNAを抽出したのち,マイクロサテライトDNAにより個体識別を行った結果,オス7個体とメス9個体を加害個体として特定した.対照個体(同地域で有害駆除により捕獲された個体)に比べ加害個体では個体間の遺伝的関係性が高いことがわかった.さらに複数の加害個体が識別された被害地では,加害個体間の親子関係が強く示唆された.これらの結果から,クマハギ発生地域に生息している全ての個体が被害を起こしている訳ではなく,特定の家系のみが被害を起こしていると考えられた.