| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) J1-10 (Oral presentation)
様々な動物において、オスが配偶行動を行う際にはメスとの交尾の機会をめぐってオス間で激しい競争が生じる。オス間での競争の起こる場面において、あるオスがメスに対して配偶行動を行うことは、他オスにとっては交尾の機会を失い不利になると考えられ、他オスがあるオスの求愛や交尾が終わるのを「待つ」ことは予測し難い。しかし、実際には、他オスの求愛している場面をオスが「待つ」という行動が観察される場合がある。
ノネコはオス、メスともに複数の異性と複数回交尾を行う。また、メスとの交尾をめぐる競争があり、一繁殖期内で複数のメスをめぐって同じオス同士が競争を行う。オスは一匹のメスに対して長時間、求愛を行っても交尾できない場合もあり、求愛にはそれまでに費やした時間やエネルギーを無駄にするコストが伴う。ノネコでは、一匹のオスが求愛を行っているときには、複数のオスがその求愛が終わるのを「待っている」状況がしばしば観察される。あるオスの求愛が終わるのを他のオスが「待ち」、他のオスがすぐに同じメスに求愛を行うことが多い。もし他オスの求愛が終わるのを「待つ」ことでそのメスとの求愛や交尾の機会を確実にすることができるのであれば、長い「待ち」時間を費やしても(コストを費やしても)、オスは求愛の順番を「待つ」ことで利益があると考えられる。
本研究では、オスが自身の求愛を「待つ」時間と求愛を行う順番の関係を明らかにする。そのために、まずノネコのオスが求愛を行う際に、あるメスに対する求愛時間が長いほど次にそのメスに求愛し交尾できるのかどうかを野外観察によって調べる。次に、どのようなオスが長い時間求愛を行っているのかについても考察する。