| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) J2-14 (Oral presentation)
多くの形質の最適値は、オスとメスで異なる。両性個体の最適値が同時に達成できないとき、性的対立が生じる。一般的に、オスの適応度は、可能な限り多くのメスと交尾することにより最大化する。しかし、メスでは、最適値を上回る交尾回数は適応度を減少させることが多い。したがって、オスの交尾回数の最適値はメスよりもはるかに高い。それぞれが自らの交尾回数を最適値に近づけるためには、両性個体が遭遇したときにオスは交尾を行うべきなのに対して、メスは交尾を拒否すべきであるという状況が頻繁に起こる。この形で性的対立が存在する場合、メスは交尾に対する抵抗を進化させることによって、高い適応度を達成できると期待される。
アズキゾウムシでは、1回交尾後の交尾の受け入れやすさを交尾抵抗の指標とした人為選択によって、メスの交尾抵抗の高い系統と低い系統とが確立されている。この人為選択系統を用いて、交尾抵抗を進化させたメスが、オスから受けるコストを緩和できるかどうかを検証した。1回交尾させた後は一切オスに接触させなかったときに比べて、常時オスの存在下においたときに、メスの適応度は低下した。このことは、メスがオスからコストを受けることを示している。メスの被る性的対立のコストが交尾抵抗の進化によって緩和されるならば、メスの交尾抵抗の人為選択に対して、オスから受けるコストの程度に相関反応が生じるはずである。この相関反応を評価するために、交尾抵抗の異なる選択系統のメスの間で、オスの存在がもたらす適応度の減少程度を比較した。その結果を報告し、議論する。