| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) J2-19 (Oral presentation)
行動の左右性、いわゆる「利き」は、数多くの動物で見られる。それは様々な局面で左右対称よりも生存上有利となり、個体の適応度に関わると考えられている。行動の左右性は脳で制御されているに違いないが、その神経機構はほとんど理解されていない。
タンガニイカ湖産鱗食魚(Perissodus microlepis)の捕食行動は個体ごとに著しい左右性を示す(Takeuchi et al. 2012)。これまでに、利き側での襲撃ではより素早い屈曲運動で被食魚に噛みつくことで捕食成功率が高くなること、その屈曲運動は逃避行動に酷似していることが分かった。また、魚類の逃避行動は後脳に左右一対で存在するマウスナー細胞で駆動されることから、鱗食時の素早い屈曲も逃避と同じ神経回路が使われていると示唆されている。今回、我々は鱗食魚の捕食行動に関わる神経回路の同定を試みた。
本種は昼行性で、その捕食行動は被食魚の数十センチ離れた位置から追跡し始めるため、視覚情報が重要であると推察される。視覚入力は、網膜で受け取られて視神経を通り、視覚中枢である視蓋へ到達する。鱗食時の屈曲運動への関与が疑われるマウスナー細胞と視蓋は、介在ニューロンにより繋がっている。我々は、捕食行動を司る脳領域を特定するための指標として、神経活動依存的に発現することで知られるimmediate early geneのArcを免疫染色で検出することにした。この組織学的実験の結果から、淘汰に関わる捕食行動を制御する神経部位、左右差について議論する。