| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) J2-20 (Oral presentation)
ウミウサギガイOvula ovumは数個体で集団を形成し、それらの多くは雌雄のペアであると指摘されているが、その明確な理由が解明されていない。そのため、ウミウサギガイのペア形成と繁殖行動の関係につて鹿児島県南薩摩市の小さな湾内において2004年5月から2006年10月まで野外観察を行った。調査地の水温は8月ごろに最高水温30℃を、3月ごろに最低水温15℃を示した。調査地で観察されたペア形成のタイプは大きく4つのタイプに分けられた:(1)2個体が近くに位置するペア、(2)交尾を行っているペア、(3)産卵を行っているメスの近くに他個体が位置するペア、(4)産卵を行っているメスの上にオス個体が位置し、交尾を行っているペア。観察されたペア形成数と繁殖個体数には有意な相関関係が見られ、ペア個体間の距離は繁殖期間中に短くなっていた。また、ペア形成個体の追跡観察の結果、観察されたペアのうち44%のペアがなんらかな繁殖行動に関与していた。繁殖期間中には粘液で形成された透明な帯状物が数mにわたり形成されており、これがペア形成に大きく関与する可能性が考えられる。これらの結果はウミウサギガイのペア形成は明らかに繁殖行動と大きく関係していることを示している。