| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-21 (Oral presentation)

オオニワシドリにおけるあずまやの方向性の偏り

*江口和洋(九大院・理・生物), 勝野陽子(ふくおか湿地保全研究会)

ニワシドリ類には、1対の平行な壁からなるあずまやを作るグループがある。あずまや入り口両側には、装飾物が置かれ、メスは壁の間からディスプレイするオスを見る。このあずまやの壁は一定の方向を向くことが知られている;南北(アオアズマヤドリ、オオニワシドリ)、東西(マダラニワシドリ)。その理由については、ディスプレイする位置に朝日が当たり、オスとその周りの装飾物に最適な照明を与えるという仮説(「最適照明仮説」)が有力である(Frith et al. 1996; Doucet & Montgomerie 2003)。この仮説に従えば、オーストラリア熱帯に生息するオオニワシドリの場合は北北西-南南東方向への偏りが予測され、Frith et al. (1996)は北部クイーンズランドの個体群でこの傾向を見いだした。これに対して、演者らは2004〜2006年の調査において。北部準州ダーウィン近郊のオオニワシドリ西部個体群がこの仮説に合わない方向性を持つことを見いだしたので報告する。

あずまやの方向は各年それぞれ、北東—南西、北北東—南南西、北北東-南南西で、この方向では、朝のディスプレイのピーク時(7時〜9時)には北側でディスプレイするオスは逆光となる。あずまやの多くは、シュロなどの灌木の中にあり、日射があずまや近辺に直接当たる時間は限られている。Doucet & Montgomerie (2003)が予測する、閉鎖環境では開けた環境よりあずまや方向性のばらつきが大きいという傾向はなく、両環境間に違いは無かった。また、オスがディスプレイする位置は南北どちらか一方に大きく偏ることは少なく、同一時間帯でも両側でディスプレイが見られた。これらの結果は、「最適照明仮説」に反する。また、東寄りに偏っているあずまやのオスほど交尾成功が高い傾向を示した。これらの理由について考察した。


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