| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) K1-08 (Oral presentation)
干上がって絶滅した池に雄雌各10個体の絶滅危惧種カワバタモロコを新たに導入しその後の数を追跡した。A池では一年後に5,318個体・二年後に5,703個体に、B池ではそれぞれ4,243個体・10,119個体に、C池ではそれぞれ1,210個体・1,984個体に増加した。新たに導入された池では、カワバタモロコは驚異的な初期増殖速度を示す。ところが、次年度には増殖速度は急激に低下、次々年度に密度は飽和状態になり、やがて密度は安定あるいは減少する。
この個体群変動要因として、水生植物の有無によるシェルター効果と溶存酸素の低下による卵・仔魚の死亡、またスジエビ・メダカ・トンボヤゴなどカワバタモロコの想定卵・仔魚捕食者の影響など、もろもろの変動要因を検討した。カワバタモロコをはじめとしたコイ科魚類の産卵場所や仔稚魚の生息場所として、湖や池の水陸移行帯や藻場が重要視され、捕食者からの避難場所としての効果を発揮していると信じられてきた。だが主にはカワバタモロコ自身の卵を食い尽くすことが困難な構造を水生植物が提供し、自滅を防いでいるのではあるまいか。