| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) K1-11 (Oral presentation)
1)西表島の11河川30地点(河川長50m)で潜水目視により分布調査を行ったところ,キバラヨシノボリは滝(>5m)の上にのみ分布していた.一方,クロヨシノボリをはじめほぼすべての魚種が滝下に分布していた.
2)様々な河川環境要因(10パラメータ:滝の有無,標高,開空度,石サイズ,水深など)を含めたGLMによる解析の結果,「調査地点下流における滝の有無」が魚類の分布を決定する最も重要な要因となっていた(キバラヨシノボリは正,その他の魚種や種数は負).
3)ミトコンドリアDNA(ND5&cyt-b)による解析の結果,各滝上のキバラヨシノボリはクロヨシノボリからそれぞれ独立に進化していることが示唆された.加えて,クロヨシノボリと各キバラヨシノボリ個体群間の遺伝的距離は滝の高さに比例した(R2=0.94).滝の高さが隔離の時間を示しているものと考えられる.ヨシノボリにおける既知の塩基置換速度を当てはめると,西表島の滝においては,1年あたり0.6mm の速度で高くなっていることが示唆された.
4)9つの形態形質(ヒレの色,ヒレの模様,体側の模様)について各個体を3段階評価し,クラスター解析を行ったところ,クロヨシノボリとキバラヨシノボリは明確に分離された.また,各キバラ個体群は,独立に進化したことが示唆されたにもかかわらず単一のクラスターを形成し,形態的に平行進化した可能性が示された.