| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L1-11 (Oral presentation)

栃木県奥日光地域におけるコウモリ類の音声に基づく活動量のハビタット間比較

*宮野晃寿(筑波大院・生命環境),德江平(筑波大・生物資源),吉倉智子(筑波大院・生命環境),安井さち子(つくば市並木),西澤瞳(筑波大院・人間総合),上條隆志(筑波大院・生命環境)

コウモリ類の飛翔活動量を量る方法の1つに音声調査がある。これは、コウモリ類が飛翔中に発する超音波であるエコーロケーションコールをバットディテクターと呼ばれる超音波検知器で感知し、その頻度を量る調査方法である。日本では森林棲コウモリ類の環境利用に関する研究はあまりなく、音声調査による研究例もほとんどない。そこで本研究では、音声調査によってコウモリ類の飛翔活動量のハビタット間比較を行い、コウモリ類の飛翔ハビタットを明らかにすることを目的とした。

音声調査は、栃木県日光市の奥日光地域で2011年8月から9月に行った。本調査地では12種のコウモリ類が確認されているが、本研究では種は分けずにコウモリ類として全体の活動量を調べた。調査環境として流路のある自然林、流路のない自然林、流路のある人工林、流路のない人工林、開放水面、湿地・草原の6つのハビタットを設定し、それぞれの環境で8つの調査地点を設けた。音声の録音は定点で行った。一定の音圧以上の音声を感知した場合にトリガーが作動し、その時点から前後1.7秒の音声をレコーダーに記録した。音声解析ソフトを用いて、日没30分後から日没1時間30分後までの1時間にコウモリ類の音声によってトリガーが作動した回数を計測し、活動量を求めた。

音声調査の結果、合計568回トリガーが作動した。ハビタット間の活動量について多重比較を行った結果、開放水面は他のハビタットよりも活動量が多かった(Steel-Dwass,p<0.05)。コウモリ類にとって、開放水面が飛翔ハビタットとして重要であると示唆された。


日本生態学会