| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) M1-04 (Oral presentation)
オスとメスの間に存在する体サイズ差(SSD)は、ダーウィン以来、sexual selection(SS)およびfecundity selection(FS)の平衡の結果として説明されてきた。大雑把にいえば、オスがメスよりも大きい場合はSSが支配的、メスがオスよりも大きい場合はFSが支配的という解釈である。この仮説の検証には、次の3種類のアプローチがとられてきた。(1)ある分類群内(ほ乳類、鳥類、は虫類など)の系統比較によって性差の進化史を再構築する、(2)特定の種について、オスとメスの体サイズに働く淘汰圧を比較する、そして(3)オスとメスの体サイズを決定する遺伝メカニズムの探求である。その成果は、Fairbairn et al. (2007ed) “Sex, size and gender roles: Evolutionary studies of sexual size dimorphism” に詳しい。
ただし、これまで多くの研究では、SSDは種内の交配集団ごとに異なるのが通常であると思われるにもかかわらず、それぞれの種に固有のSSDが存在すると仮定する傾向にあった。そのためか、集団間変異を詳しく検討した例はほとんどなく、気候条件や緯度との相関関係で説明しようとしている例がわずかにある程度である。我々は、カワトンボ属の2種の地域集団を比較することによって、相互の繁殖干渉が翅色、翅長、腹長などの形質にどのような形質置換を生じさせるかを検討してきた。その結果、繁殖干渉の有無は、それが性特異的な形質置換を起こした場合、SSDにまで影響しうることがわかった。これまで、SSDは種内のSSとFSの問題としてしか考えられてこなかったが、我々の結果は、SSDは種間相互作用の問題でもあることを示唆している。