| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) M1-05 (Oral presentation)

タイコウチ上科における採食行動に関する適応形態

山根 大樹*,金沢 謙一(神奈川大学)

タイコウチ上科にはコオイムシ科とタイコウチ科の2科があり、本研究ではコオイムシ科のコオイムシとタガメ、タイコウチ科のタイコウチとミズカマキリの4種を観察した。これらが生息する水田や溜池で調査した結果、タイコウチは主に水深が浅い水底の物陰で静止していた。コオイムシは植物等につかまり移動していることが多く、タガメとミズカマキリはやはり植物等につかまり水の上層付近で静止している事が多かった。水槽実験で同所的に生息する小動物を与えた結果、コオイムシはサカマキガイやミズムシのような動きの遅い動物を歩き回って探索して捕食した。タガメはドジョウのような大型の動物、タイコウチはヤゴのような水底近くの動物、ミズカマキリはマツモムシのような水面付近を遊泳する動物を待ち伏せして捕食した。行動解析からは、コオイムシ科の2種は捕獲脚と中脚で獲物を抱え込むようにして捕え、タイコウチ科の2種は捕獲脚のみで獲物を挟んで捕えるという特徴があることがわかった。獲物を抱え込むように捕らえるコオイムシ科の捕獲脚(基部が腹側にある)は、4脚を用いて体に対して大きな動物を捕らえるのに都合がよい。獲物を捕らえるのに捕獲脚のみをつかうタイコウチ科では、基部が体の前端にある捕獲脚は背側まで可動し、さらに、捕獲に用いない中脚、後脚で伸びあがることで広範囲の獲物を捕らえられる。これらの適応形態は、それぞれの系統の他種でも観察され、系統に由来すると考えられる。

これら4種は、系統的制約を受けるそれぞれの捕獲様式の下、コオイムシ科では採食戦略の違い(探索と待ち伏せ)、タイコウチ科では微環境の違い(水の上層と水底)により、それぞれ生息場所に適応している。


日本生態学会