| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) M1-06 (Oral presentation)
キクイムシ類は大きく樹皮下穿孔性と養菌性に分けられる。樹皮下穿孔性のキクイムシは成虫が内樹皮に穴を掘り産卵し、幼虫は内樹皮を食べて成長する。養菌性キクイムシの成虫は内樹皮よりも中心部に近い辺材まで穴を掘り産卵する。この幼虫は成虫が運んできた菌を食べて成長する。成虫が内樹皮と辺材の両方に穴を掘るような種は知られていない。
本研究ではキクイムシに関する数理モデルを作成し、それを動的ゲームとして解析することで、辺材と内樹皮の両方に穴を掘ることは進化的に安定な戦略(ESS) になりにくいことを示した。加えて、産まれてきた幼虫の間の競争の強さがキクイムシの穿孔場所決定に関わることもわかった。幼虫間の競争が弱い場合には、内樹皮と辺材のうち、幼虫にとってより良い方だけを使うことがESSであったが、幼虫間の競争が強い場合には成虫がどちらを掘りやすいかということも問題になり、幼虫にとって悪くても掘りやすい方を使うことがESSとなった。さらに、幼虫自身による競争の緩和を仮定することにより、一部のキクイムシで見られるように成虫が内樹皮のみを掘り、幼虫は内樹皮と辺材の両方を使うこともESSとなることを示した。