| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) M1-10 (Oral presentation)
雌性配偶体は、卵を造る器官であり、胚乳へと発達する器官でもある。裸子植物の雌性配偶体は大きく、受精時には種子と同程度の大きさになっている種も多い。こうした種では、胚乳への資源投資のかなりの割合が受精後に行われることになる。これに対して、被子植物の雌性配偶体は非常に小さい。そして、胚乳への資源投資の大部分は受精後に行われる。こうした違いは、重複受精の有無と並んで、裸子植物・被子植物を特徴づけるものである。ではなぜ、雌性配偶体の大きさにこのような極端な違いがあるのであろうか。本研究では、ゲーム理論を用いて、進化的に安定な雌性配偶体の大きさを解析した。雌親の立場からは、未受精の雌性配偶体(の胚乳)に資源を投資することは危険である。したがって、雌性配偶体が小さいほど雌親にとっては有利であろう。いっぽう子の立場からは、あらかじめ資源を先取りしておくことが有利となりうる。そのため、受精前に資源を吸収してしまう戦略が成り立ちうる。こうしたことを考慮して解析した結果、被子植物の極小の雌性配偶体が進化する条件は以下の二つであることがわかった。
1) 卵の受精率が低い。
2) 未受精でありながら雌性配偶体が成長してしまった場合の中絶のコストが大きい。