| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) M2-15 (Oral presentation)

中部日本におけるハヤブサと同じ崖に集団営巣するチョウゲンボウの行動時間配分と餌搬入率

*本村健(中野市博),常田英士(十三崖チョウゲンボウ応援団)

チョウゲンボウFalco tinnunculusは、崖や人工物に単独から20つがい程度までの集団で営巣を行う。日本では崖地の集団営巣地が減少しており、その原因の一つとして天敵のハヤブサFalco peregrinusの営巣地への定着が推測されている。長野県中野市に位置する十三崖は崖地の集団営巣地であり、2010年よりハヤブサの定着が確認されている。そこで、その存在がチョウゲンボウの行動時間配分と餌搬入率に影響するのかを明らかにするため、十三崖とハヤブサが定着していない長野県小布施町の集団営巣地との比較を行った。

調査は2011年4月6日から7月7日まで行った。そして、各つがいの雌雄ごとの警戒・防衛、探・採餌の時間と、餌搬入回数、巣立ちヒナ数を定点観察により記録した。十三崖は3つがい、小布施は5つがいが営巣し(調査は3つがい)、全ての巣で繁殖は成功した。警戒・防衛時間は巣内育雛後期および巣外育雛期の十三崖のオス間で有意な差があり(巣内育雛後期χ2=10.26;P<0.01,巣外育雛期χ2=7.75;P<0.05)、巣内育雛後期では小布施のオスより有意に時間が長い個体(U=12.00; P<0.05)と短い個体(U=30.50; P<0.05)が確認された。警戒・防衛時間が長いオスは、探・採餌の時間が小布施より有意に短く(U=31.00; P<0.05)、逆に警戒・防衛時間が短いオスは探・採餌の時間が小布施より有意に長かった(U=12.00; P<0.05)。しかし、そのステージでの餌搬入率は、小布施との差は認められなかった(U=168.00; P>0.05)。なお巣立ち雛数は、両営巣地ともに平均4.7羽であった。これらの結果から、十三崖のチョウゲンボウのオスは、巣内育雛後期には個体によって、ハヤブサの存在に対して警戒・防衛を長く行い、また逆に警戒・防衛を短くすることでハヤブサからの攻撃を回避したと考えられた。


日本生態学会