| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) M2-23 (Oral presentation)
湖沼において水草が化学物質を放出しており, それが動植物プランクトンに影響を与えるということが知られている.
動物プランクトンの一種, 大型ミジンコのDaphniaは, 湖沼生態系において重要な役割を果たしている. 水草が放出する化学物質がDaphniaの行動に影響を与えているという報告がある. さらに, その化学物質は, Daphniaの生活史特性も変えている可能性がある.
水草帯は主に沿岸域に分布し, 人為的化学物質が流入しやすい場所と考えられる. よって, 沿岸域に存在するDaphniaは, 人為的化学物質と水草物質に同時に暴露されることになる. そこで, 本研究では, これらの複数の化学物質の複合影響を明らかにするため, コカナダモ(Elodia nuttallii)と殺虫剤カルバリルを用い, 水草物質と殺虫剤のDaphniaの生活史特性への影響を解析した.
継体培養したミジンコ(Daphnia pulex)の抱卵個体を爆気水で飼育し, 1齢仔虫を実験に使用した. コカナダモは滋賀県の琵琶湖から採取し, 室内で維持したものを使用した. 5L水槽2個に爆気水を入れ, 片方にコカナダモを30g入れ, 24時間維持した後, その水を濾過して試験水として用いた.
50mlバイアルビンに1齢仔虫を1個体ずつ入れ,全6処理区 (コカナダモ有無×殺虫剤3濃度) 作成し, 飼育しながら毎日観察した.
コカナダモに曝されたD.pulexはより小さいサイズで成熟し, さらに, 成熟に時間がかかることがわかった. よって, コカナダモの放出する化学物質と殺虫剤は, ミジンコに何らかの影響を与えていることが示唆された.