| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-153J (Poster presentation)
生物群集の構造や動態を決定する上での種間相互作用の重要性は広く認められ、捕食や競争については多くの野外研究や理論研究が行われている。しかし、相利については、単純なLotka-Volterra型のモデルでは、個体数が発散することが多いことなどから、捕食や相利の場合と違って、一般に認められている数理モデルがない。花粉媒介や種子散布などの相利系では、植物が動物に花粉や蜜などの資源を提供し、動物は植物に花粉媒介や種子散布などのサービスを提供する。植物は、少なくとも自家受粉が可能であれば、動物に頼らなくても成長できる独立栄養生物であるが、動物は植物からの資源の提供なしには成長できない従属栄養生物である。それなのに、従来の相利のモデルは、植物だけではなく動物も内的自然増加率が正であることを仮定したものが多かった。また、相利関係にある2種の個体群は、群集内の他種とも相互作用し、送粉者と相利関係にある植物を食う植食者や、送粉者を食う捕食者がいるのが普通である。本研究では、植物からの資源の提供がなければ存続できない相利者を考え、植物にサービスを提供するためのコストを考慮し、植食者が侵入した場合に植物-相利者の系に及ぼす影響を調べる。
植物-相利者の2種系では、コストが大きい時には相利者は絶滅するが、コストが小さければ相利者と植物が共存する。しかし、コストが小さい時に相利者が植物に与える正の効果が大きすぎると2種の個体群密度は発散し、コストが大きい時に正の効果が大きくなると相利者は絶滅する。
この系に、送粉や種子散布による正の効果を与えない植食者が侵入すると、相互作用の強さによって、送粉者が絶滅することもあるが、相利のコストが小さく正の効果が中程度の場合には3種共存が安定になる場合がある。つまり、群集内に多くの種とさまざまな相互作用があることにより、相利系が安定化され長期に存続可能になることがある。