| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-157J (Poster presentation)

多食性昆虫の食草選択‐ナナフシモドキとヤマトフキバッタの比較‐

伊藤 珠実*(東邦大院・理・生物), 長谷川 雅美 (東邦大・理・生物)

どのような要因が食植性昆虫の食草の好みを決定しているのだろうか。植物の物理的防御特性や化学的防御特性は多食性の植食性昆虫の食草の範囲に影響すると考えられている。また、植食性昆虫の植物の好みは以前の摂食経験に影響を受けることがあり、植食性昆虫-寄主植物の関係は固定されたものではなく変動し得ることが知られている。

本研究では、多食性昆虫であるナナフシモドキとセトウチフキバッタについてどのような要因が食草の好みを決定するのかを明らかにすることを目的とする。

野外調査は、野外で利用している植物種を季節ごとに調べた。室内実験では、ナナフシモドキは、野外でエノキにて採集した個体を室内でエノキを与えて飼育した個体とソメイヨシノを与えて飼育した個体、野外でソメイヨシノにて採集した個体を室内でエノキを与えて飼育した個体とソメイヨシノで飼育した個体を実験に用いた。そして、ソメイヨシノ、エノキ、ウメ、フジ、コナラの5種の植物種を用いて食草選択実験を行なった。セトウチフキバッタは、有毛のクサギ、マルバグミ、無毛のシマクサギ、ガクアジサイを用いて食草選択実験を行なった。

室内実験の結果、ナナフシモドキは野外でエノキにて採集しエノキを与えて飼育した個体は、ソメイヨシノで飼育した個体に比べて、エノキをより多く摂食した。したがって、ナナフシモドキに関しては、食草の好みの決定要因の一つとして、摂食経験の影響が示唆された。セトウチフキバッタは、有毛の植物種よりも無毛の植物種をより多く摂食した。よって、セトウチフキバッタの食草の好みの決定要因の一つとして、葉の物理的防御特性の影響が示唆された。


日本生態学会