| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-158J (Poster presentation)

中部山岳亜高山帯におけるマルハナバチ類6種の形態変異と花利用様式

*北沢知明(信州大院・工),江川信,市野隆雄(信州大・理)

マルハナバチ類 Bombus(ミツバチ科)は大部分が北方地域や山地に分布する一年性の真社会性昆虫である。そして、高標高地域の虫媒花にとっては双翅目と並ぶ重要な送粉者であることが知られる。日本に分布するマルハナバチ類は16種で、中部山岳地域には10種が分布し本州において最も種数が多い。しかし、日本の亜高山帯におけるマルハナバチ群集の基礎情報に関する調査はほとんど行われていないため、どの種が、どのように花を利用して共存しているのかはっきりしない。本研究では人為攪乱の少ないと考えられる上高地(主に標高2400mの高茎草原)において、マルハナバチ類の構成種、形態、季節発生消長と利用植物を8月から9月末まで調査した。

その結果、上高地におけるマルハナバチ群集は、ヒメマルハナバチ(以下ヒメ:個体数比48%)、ナガマルハナバチ(ナガ:29%)、ミヤママルハナバチ(ミヤマ:11%)、オオマルハナバチ(オオ:5%)、トラマルハナバチ(トラ:5%)、ヒメに労働寄生するニッポンヤドリマルハナバチ(ヤドリ:2%)の6種で構成されていた。

また、吸蜜する際に重要な役割を果たすと考えられる中舌長、下唇前基節長、頭部長、頭部最大幅、頭部下端幅、胸部最大幅の6形質を測定した。6形質を用いた主成分分析の結果、散布図における個体の分布は種ごとにまとまり、最も大きさの近い種間においてわずかな重複がみられた。

ワーカーは8月下旬まではヒメの個体数が最も多く、8月下旬以降はヒメが減少しナガ、ミヤマが増加した。また、越冬女王を確認できなかったオオ、トラもワーカーは確認された。

そして、高茎草原には18種の虫媒花が観察され、マルハナバチ媒であったのは7種であった。このうち、3種は8月上旬に多く咲き、4種は8月下旬から咲いた。ヒメは7種全ての花を利用したが、他のハチ種は8月下旬から咲く4種を多く利用した。


日本生態学会