| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-159J (Poster presentation)
捕食者飽食仮説によれば、植物は凶作年に捕食者の密度を下げ、豊作年には捕食者の増加が追いつかず捕食から逃れた健全な種子が多数生産される。本仮説が成り立つための前提として種子食昆虫が餌資源を種子に依存していることがあげられるが、ヤマモモMyrica rubra の種子捕食者であるヤマモモキバガThiotricha pancratiastis は非果実期には新葉を利用して年多化の生活史をもつことがわかっている。そこで本研究では、ヤマモモ‐ヤマモモキバガ相互作用系において捕食者飽食仮説を検証するため、ヤマモモの結実量と食害率の年変動を7年間継続して調査するとともにヤマモモキバガの季節消長と個体数の年変動を調べた。
ヤマモモは雌雄異株の常緑高木で液果を実らせる。2005年3月から2011年の7月に屋久島半山地域のヤマモモ樹冠下にリタートラップを設置し、落下果実と蛹化のために落下したヤマモモキバガの終齢幼虫を計数した。また、展葉パターンを調べるため、ヤマモモのシュート上の果実数と新葉数を2ヵ月に一度記録した。
2005年から2011年までの落下果実数はそれぞれ、1409.7個/m2、641.8個/m2、1219.4個/m2、647.1個/m2、1327.7個/m2、473.7個/m2、2290.7個/m2であり、弱い隔年結実習性を示した。一方ヤマモモキバガの果実食幼虫数は、豊作年には凶作年の約5~20倍に増加した。ヤマモモキバガによる種子加害率は必ずしも豊作年で低下することはなく、ヤマモモ‐ヤマモモキバガ相互作用系においては捕食者飽食が成り立っていないことが示唆された。