| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-160J (Poster presentation)
ホシガラスは亜高山帯で繁殖し、冬期も亜高山帯の針葉樹林に留鳥として生息する。本種は北海道や本州中部などではハイマツの種子を食物とし、秋には貯食することが知られている。しかし、歴史的に新しい山である富士山にはハイマツが生育していない。演者らがこれまでに行なった調査により、富士山のホシガラスはゴヨウマツ(ヒメコマツ)の種子を貯食していること、富士山の北麓には山地帯から亜高山帯にかけてゴヨウマツが点在しており、ホシガラスは8月下旬〜11月中旬にかけてそれらの種子を森林限界上部に運び上げ、貯食することが明らかになった。また、貯食したゴヨウマツの種子を翌年の8月まで利用すること、富士山5合目にはホシガラスがほぼ周年にわたって生息し、繁殖していることも確認された。貯食した種子を長期的に利用していることから、貯食量は本種の適応度に大きく関係していると考えられる。しかしながら、貯食した種子は食物資源の少ない亜高山帯では他の動物に横取りされる可能性があり、冬期は積雪によって種子を取り出せないことが予測される。そのため、亜高山帯という厳しい環境下でホシガラスが生息するためには、貯食場所の選定が重要になると考えられる。そこで本研究では、ホシガラスの貯食場所の選好特性を明らかにすることを目的にした。
富士山北麓の森林限界付近におけるホシガラスの貯食場所を直接観察によって調べた。その際、①亜高山帯針葉樹林内、②森林限界上部のパッチ状植物群落内、③パッチエリアの裸地、④裸地の4箇所のどこに貯食しているのかを記録した。さらに、貯食した種子の環境ごとの消失率(ほかの動物による持ち去り率)を把握するために、亜高山帯針葉樹林内、パッチ内、裸地に種子を埋める実験を行なった。以上の調査結果から、ホシガラスが森林限界上部に貯食をする理由を考察する。