| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-028J (Poster presentation)
乾燥地では水の制限により植生は疎らとなりやすい。そのような環境では、灌木などによる肥沃の島や看護効果、種子の捕捉効果などが見られ、灌木周辺に植生が発達することがある。そのため灌木には植生の保全や回復への貢献が期待されている。しかし、灌木のサイズや風向(風上と風下)、灌木からの距離による植生発達への効果の違いはよく分かっていない。そこでモンゴル草原に生育する灌木Caragana microphyllaについて、風向、灌木サイズおよび灌木からの距離によって、風散布された種子の捕捉量がどの程度異なるのかを調査した。また、捕捉された種子がどの程度植生発達に繋がっているのか明らかにした。
種子はC.microphyllaの風上の株元付近に特に集積しており、株のサイズが大きくなるにしたがい集積量が増加する傾向があった。灌木の周辺植生の地上部乾燥重量は、風上では距離による違いは見られなかったが風下では株元付近で有意に低かった。植物個体数は風向にかかわらず灌木付近で少なく、離れるにしたがい増加した。灌木サイズが大きくなるにしたがい灌木周辺の植物個体数は減少する傾向が見られた。土壌含水率は灌木付近で低くなる傾向が見られたが灌木サイズによる違いは見られなかった。
以上から、モンゴル草原では、灌木の風上側の株元に特に種子が集積するものの、株元における土壌含水率の低下などの影響で出現植物数が少なく、植生の発達に繋がっていないことが明らかになった。灌木サイズは、株元における種子集積には正の、出現植物数には負の影響を持っていた。C.microphyllaによる種子集積は、C.microphylla枯死後の植生回復に寄与するかもしれない。