| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-032J (Poster presentation)
近年、里地里山では、管理放棄により生物多様性の劣化が懸念されている。クズ(〈i〉Pueraria lobata〈/i〉)は、つる性の多年草で、マメ科クズ属に属する。かつては様々な用途に利用されていたが、現在は過剰に繁茂し、生物多様性の低下に繋がっている。本研究は、草刈りがクズ群落に与える影響を調べることにより、除草剤を用いないクズの管理方法を模索し、草地の植物を中心とした生物多様性の向上に繋げることを目的としている。
調査は、近畿大学奈良キャンパス(奈良市中町)内のセイタカアワダチソウ-クズ群落で2010年春から2011年冬まで行った。調査地を草刈りによる管理を行う草刈り区と、管理を行わない対照区に分類した。草刈りは、2010年度は7月21日と9月25日に地際で、2011年度は7月12日と9月23日に、地上高40cm程度で行った。調査項目は、種数、個体数、被度、クズの株数、シュート数、草高に加え、微気候として日射量、地温を測定した。
コドラート内の植物種数は、草刈り区で21科33種、対照区で14科21種、全体では14科35種であった。草刈り区では、地際での刈り取り後に、種数は一時的に激減したが、地上高40cm程度の刈り取り後には、種数はほとんど減少しなかった。また、種多様度指数H’は、40cm程度の刈り取り後、草刈り区が有意に高くなった。2011年の草刈り区における、クズの新規シュート数、草高、被度とも前年より有意に低かった。2011年の対照区では前年に比べ、草高は有意に低く、被度は有意に高かった。日射量は、両地区で5月以降急激に減少した。草刈り区では、草刈り後に日射条件が改善されたが、9月の草刈りまでの間に再び低下した。地温は、春から秋にかけて草刈り区が有意に高く、冬から初春にかけて対照区が有意に高かった。地温の日較差は年間を通じて草刈り区が有意に高かった。両地区を比較した地温の差は、2011年の方が有意に小さかった。