| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-034J (Poster presentation)
東北地方太平洋沖地震により発生した大津波は、東北から関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらし、海岸植生にも大きな影響を与えた。クロマツやアカマツを主体とした海岸林は、幹折れや根返りといった津波の物理的な破壊により、一面なぎ倒されてしまった。また、津波によって運ばれてきた砂の堆積や表土の剥ぎ取りといった土壌攪乱が生じていた。我々は、津波によってもたらされた海岸植生への影響を明らかにするため、宮城県の仙台湾にある南蒲生地区において、汀線から砂浜、砂浜植生、海岸林、湿地、そして内陸の水田までを一体として含めたモニタリングサイトを設け、実態把握の調査を行っている。ここでは、海岸林及び砂浜植生について植生調査を行った結果を報告する。
海岸林(10m×10m区)については、影響の程度により ①樹木の倒壊を免れた林分(10地点)、②樹木が倒壊した被災林分(14地点)、③樹木が流亡し、裸地状態となった地表攪乱地(8地点)、の3つに区分して調査を行った。樹木の倒壊を免れた林分は高木層にはクロマツやアカマツ、ヤマザクラが優占していたが、被災した林分では高木層から亜高木層が失われてしまい、代わりに萌芽によって再生したハリエンジュやイタチハギが優占する高さ2~3mほどの低木林へと変化し、またヨウシュヤマゴボウやコマツヨイグサといった外来植物の出現も顕著であった。樹木の倒壊の有無にかかわらず、表層土壌の攪乱が生じた場所では、林床に一年草のマルバアカザやイヌビエ、メヒシバが優勢となって出現していた。砂浜植生(2.5m×2.5m区; 13地点)では、表層が流されたためか植被率が20~40%程度と低いものの、ハマヒルガオやコウボウムギの出現頻度が高く、回復傾向が見られた。