| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-040J (Poster presentation)

伊豆天城山における森林植生の種組成変化とニホンジカの影響

*星野義延(東京農工大),大橋春香(東京農工大),藤田卓(日本自然保護協会),星野順子(東京環境工科学園)

近年、ニホンジカの生息密度の増加および分布拡大による農林業被害の増加や自然植生への影響が各地で報告されている。伊豆半島でもシカの生息密度増加による植生の不可逆的な変化の進行が危惧されている。しかし、伊豆半島ではシカが高密度化する前と後の植生を比較して、構造や種構成の変化を実証的に調べた研究が無いため、高密度化の自然植生への影響については不明である。本研究はシカの高密度で生息している伊豆半島の天城山において、自然性の高い植生を対象に、植物の種構成や階層構造をシカが低密度であった1990年前後と2010年で比較し、この間の植生変化の実態を解明することを目的とした。

1990年前後に植物社会学的な方法を用いて調査を行った高標高域のブナ林など24地点で植物社会学的な植生調査を実施した。これと同時にシカの利用度の指標としてシカの糞粒数のカウントを実施し、採食痕やシカ道の有無なども記録した。

天城山塊のブナ林を主体とする森林で追跡調査した24地点中23地点で低木層や草本層の植物に食痕が認められ、シカによる植物の採食が現在も続いていることが明らかとなった。また、かつてスズタケが林床で優占していた7地点すべてでスズタケの優占度が大幅に減少し、ササ型林床のブナ林が無くなった。不嗜好性植物の顕著な増加は認められず、アオハダ、エゴノキ、ハリギリなどの木本の稚樹・実生やタニギキョウ、コチヂミザサなどの小型草本が多くの調査区で新たに出現していた。常在度が極端に低下した種はなく、常在度が増加した種が多かったため、調査区内の出現種数の平均は24.8種から37.0種となり、調査区内種多様性(α多様性)は増加した。β多様性を指標する調査区間の平均類似度は1990年前後と2010年で大きな違いは無かった。


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