| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-086J (Poster presentation)
植物組織内部に病徴を現さずに生息する菌類を内生菌と呼ぶ。一部の内生菌は病原菌抵抗性など宿主植物の生存・成長にプラスとなる効果を与えることが知られているが、温帯性樹木で内生菌が実生の生存・更新に及ぼす影響を調べた研究例は少ない。一般に、成木下で同種実生の死亡率は他種実生に比べ高いが、その要因として樹種特異的な病原菌の同種実生への感染が知られている。本研究では、逆に内生菌による種特異的な他種実生への病原菌抵抗性の付与が他種実生の生存率を高めている可能性を検証するため、ウワミズザクラ実生の内生菌の種組成に対する近接する成木の影響および内生菌の病原菌抵抗性を明らかにすることを目的とした。
同種(ウワミズザクラ)および異種(ミズキ)の成木下で発芽したウワミズザクラ実生の葉から内生菌を分離し、形態観察によってタイプ分けしたところ全部で16タイプが分離された。優占していたFusarium sp.およびColletotrichum anthrisciの2種のうちC.anthrisciの発生頻度は同種成木下よりも異種成木下で大きかった。また、病原菌(ミズキ輪紋葉枯れ病菌Haradamyces foliicola)に対するこれら2種の抵抗性を麦芽エキス寒天培地上での対峙培養試験により検討した結果、どちらの種でも病原菌に対する培養条件下での潜在的な拮抗作用が認められた。C. anthrisciは多犯性の病原菌として知られているが、本研究により発芽後の早い時期から内生菌として実生に存在することが分かった。C. anthrisciが内生菌として他の病原菌に対する抵抗力を発揮するならば、ミズキ成木下で本菌の発生頻度が高いことはウワミズザクラ実生の生存に寄与している可能性がある。