| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-088J (Poster presentation)

里山雑木林におけるウメガサソウとイチヤクソウのアーブトイド菌根形成

*熊谷友彦(東海大・院・人間環境),岩本泰,藤吉正明(東海大・教養)

里山雑木林の菌根性植物の保全において、それら植物の根に共生している菌類を把握することは重要である。本研究は、里山雑木林に生育する菌根性イチヤクソウ科植物であるウメガサソウとイチヤクソウに着目し、それらにどのような菌根菌が共生しているかを明らかにすることを目的とした。

調査地は、神奈川県秦野市のブナ科コナラ(Quercus serrata)が優占する雑木林とした。雑木林に生育する両種の根を定期的に採取し、それらの菌根の形成状況を観察した。その後、菌根からDNA抽出を行い、分子生物学的な手法を用いて菌根菌の種の同定を行った。

ウメガサソウとイチヤクソウの菌根形成の観察では、菌根菌の存在を示す菌鞘やハルティヒネット等を確認することができた。菌根菌の同定の結果、ウメガサソウから3属3種(Lactarius sp.1、Russula sp.1、Cenococcum sp.1)、イチヤクソウからは2属7種(Russula sp.1、Russula sp.2、Russula sp.3、Russula sp.4、Russula sp.5、Tomentella sp.1、Tomentella sp.2)の菌根菌を確認することができた。Russula属の菌根菌は、両種において確認され、種数も多く見られた。Russula属の菌根菌は、ブナ科、ヤナギ科、マツ科などの樹木に外生菌根を形成することが知られている。また、ウメガサソウのみで確認されたCenococcum属の菌根菌は、亜熱帯地域から極地などのツンドラ地域まで幅広く分布し、樹木に外生菌根を形成することが知られている。結果として、雑木林の林床に生育するウメガサソウとイチヤクソウは、森林の優占樹木に菌根を形成することが知られている菌類と同様の菌根菌が定着していることが明らかになった。


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