| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-090J (Poster presentation)
地衣類は菌類と藻類の共生体であり、古来、民間薬、染料として用いられてきたが、最近では極限環境下での生育が可能であるため環境指標としても利用されている。地衣類にはその形態によって、葉状、樹状、痂状の大きく3つに分けられる。その中でも本研究で用いるホソピンゴケ属(Chaenotheca)は痂状の地衣類で、ピン状の子器(ごく細い柄の先端に小さな頭部をつける)を持つピンゴケ類(calicioid lichens)に属す。これまで地衣類の同定は主に形態と地衣成分(地衣類特有の二次代謝産物)によって行われてきたが、ピンゴケ類ではその指標となる形態の大きさが他に比べて小さく、形態による同定は困難である。そこで、遺伝子情報を用いた同定が重要であるが、日本産ピンゴケ類では行われていない。今回、ホソピンゴケ属について形態、成分および分子生物学的な手法による同定を検討した。
全国各地から採集されたホソピンゴケ属標本について地衣体の色や形態を調べ、次いでHPLCによる成分分析を行った。その結果、C. chlorella、C. chrysocephala、C. furfuracea、C. stemoneaの4種を仮同定した。次に遺伝子情報を用いた同定を試みた。標本のrDNAのITS領域の配列を決定し、既に報告されている配列と比較検討したところ、仮同定したC. chlorellaはC. chrysocephalaと相同性が高く、C. stemoneaは同種との相同性が低いことを確認した。以上の結果より、C. chrysocephala、C. furfuraceaの2種を同定した。仮同定したC. stemoneaについては更に検討を要することが明らかになった。