| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-233J (Poster presentation)

ヤマトシロアリReticulitermes speratusの有翅虫の性比と体サイズの地理的変異

*諸岡史哉, 北出理, 中川和樹, 滋田友恒 (茨城大・理), 石原道博 (大阪府立大), 吉村美穂, 前川清人 (富山大・理工)

シロアリのコロニーはニンフから分化した雌雄の有翅虫ペアによって創設される。ヤマトシロアリでは、有翅虫の性比は個体群レベルでメスに偏り、コロニー間で大きくばらつくことが報告されている。性比の偏りをもたらす原因には、1. 単為生殖能をもつ本種が、雌-雌ペアでコロニー創設を行う可能性があること、2.ワーカー型幼形生殖虫による繁殖の可能性、が挙げられ、性比がばらつく原因としては低コロニー密度下での近親交配の回避などが考えられる。本種の分布域を網羅して有翅生殖虫の繁殖に係わる形質を調査した例はないが、性比や体サイズの地理的変異を把握することは種内の繁殖様式の多様性を議論する上でも重要である。

本研究では、ヤマトシロアリの16個体群、計149コロニーから有翅虫(終齢ニンフ)とワーカーを採集し、性比を調査した。また10個体群の有翅虫の雌雄の頭幅を測定した。さらにCOII遺伝子の塩基配列からコロニー間の系統関係を推定し、性比と体サイズに系統の影響があるかを調査した。その結果、ワーカーの性比はほぼ1:1であるが、有翅虫ではメスに偏った。有翅虫性比は、個体群レベルでは気温の低い地域で、よりメスに偏る傾向が見られた。ただしコロニー間のばらつきも非常に大きかった(コロニーごとのメス率18-100%)。また、ばらつきの大きさは平均気温と有意な負の相関を示した。有翅虫の体サイズは、雌雄ともに採集地点の平均気温と有意な負の相関があった。COII遺伝子の遺伝距離と性比の偏りやばらつきとの間には有意な相関がみられなかったが、有翅虫の体サイズとは有意な相関がみられた。これらの結果を総合し、性比と体サイズに変異をもたらす要因について議論する。


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