| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-234J (Poster presentation)

ヤマネGlirulus japonicusによる休眠場所の選択

*玉木恵理香(筑波大・生命環境),門脇正史(筑波大・生命環境),落合菜知香(筑波大・生物資源),杉山昌典(筑波大・農技セ)

ヤマネGlirulus japonicas(国の天然記念物,準絶滅危惧種)は森林に依存した種であり、主に樹上で採餌・日内休眠・繁殖を行うことが知られる。日内休眠に同じ場所を連続して利用することが少ないので、休眠場所が空間利用の上で重要だと考えられる。しかし、休眠場所周辺の環境については十分な知見が得られていない。本研究では特に樹木に着目してヤマネの日内休眠場所の選択性を調査した。

本調査は長野県にある筑波大学農林技術センター川上演習林で行った。人工林が約7割、天然林が約3割で構成されている。調査は2010年6月~10月と2011年6月~11月に行った。調査地内に設置した巣箱でヤマネを捕獲し、小型発信機(約0.37g)を装着した後に捕獲した場所へ放獣した。八木アンテナと受信機でヤマネの日中の休眠場所を特定して、その特徴と位置を記録した。休眠場所を中心とする周囲樹木(≦半径10m円内)の胸高直径(DBH≧5cm)、樹種、状態(生木または枯死木)、樹洞数を周辺環境の項目として調べた。そしてヤマネが利用した樹木と利用しなかった周囲樹木の上記項目(DBH、針葉樹・広葉樹の割合、生木・枯死木の割合、樹洞の保有率)を人工林と天然林ごとに比較した。

2010年に28個体、2011年に24個体のヤマネを捕獲した。2年間で追跡できた13個体は延べ52ヶ所を利用していた。人工林と天然林ともにヤマネは樹上と巣箱をよく利用しており、地面の利用はほとんど見られなかった。ヤマネの休眠場所としての利用と、DBH、樹洞の保有率のみにそれぞれ関係がみられ、太い木と樹洞のある木がより利用されていた(DBH:人工林と天然林P<0.01、樹洞:人工林P<0.0001、天然林P=0.04)。巣箱の存在も人工の樹洞とみなすと、樹洞の存在がヤマネの休眠する樹木の選択に関係していると考えられる。


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